鉄鋼表面に亜鉛を被覆して防錆する方法には次のようなものがあります。
(1) 溶融亜鉛めっき
(2) 電機亜鉛めっき
(3) シエラダイジング
(4) 亜鉛溶射(メタリコン)
(5) 高濃度亜鉛未塗装
このように亜鉛被覆による鉄の防錆方法は幾つかあります。
そして厳密には塗装上それぞれ異なる問題がありますが、ここでは主に溶融亜鉛めっきを対象に塗装を考えてみるとします。
亜鉛めっき鋼の塗装は最初に塗装する時に亜鉛面に塗膜が密着しなければなりませんが、経時後亜鉛面で反応が起こり剥離や塗膜のふくれ、割れなどの欠陥が生じるものであってはなりません。
そこで亜鉛面の塗装の難しいと思われる理由を列記してみますとだいたい次のようなものがあります。
1)亜鉛表面は活性が強い
亜鉛の表面は鉄や鋼に比べて活性が強く、有機塗膜の接着強度が小さい。
2)亜鉛二次生成物は水可溶性
亜鉛の表面は変化しやすいので、経時後の亜鉛表面には二次生成物(塩基性複塩など)が生成している。これらは水に可溶な物質が多く、塗膜を透過した水がこの層に到達すると溶出して塗膜が浮くことになります。
3)白さびは塗膜を持ち上げる
亜鉛の二次生成物は(つまり亜鉛に白さび)は金属亜鉛に比べ数倍から数十倍の体積増加が起こるため、わずかに溶けた亜鉛でも塗膜を持ち上げる役をします。
4)亜鉛のPH安全領域
塗膜を透過して亜鉛表面に到達した水のPHが9〜11以外の範囲では亜鉛の溶出が起こって塗膜密着保持ができなくなります。
5)亜鉛の金属石ケン
ある種の油性系塗料を亜鉛面に塗ると塗装初期に塗料中に存在する脂肪酸と亜鉛が反応し、水可溶性、金属石ケン形成します。また塗膜が紫外線により分解して生ずる脂肪酸とも亜鉛は反応して同様な金属石ケンを作ります。これらは一種の潤滑剤にもなり亜鉛表面へ水分の脆化や剥離の原因となります。
このようなことは亜鉛と油性系塗料の関係だけでなく、ある種の顔料や酸価の高い樹脂でも同様なことが起こり得るのです。
6)亜鉛面の異種金属
亜鉛面に異種金属(鉛、銅、炭素)があると水の介在によって電池が形成されます。このため生成した亜鉛二次生成物の溶出が起こり、塗膜剥離の原因となります。
7)亜鉛二次生成物はアルカリ性
亜鉛面で溶出した亜鉛二次生成物はアルカリ性を示します。このため被塗装面に結露水などがあると塗膜寿命を縮める結果になります。特に海洋性環境ではその傾向が強く、アルキッド系塗料や油性系塗料は脆化し、塗膜付着力が著しく減少します。
8)めっき面の空気内臓
めっき工程で生じた湯じはやスラッジの巻き込み部分およびスパングルの結晶粒界には空気の内臓があって、もしこのような面に予熱をしないで焼付塗装を行えば焼きぶくれを生ずることになります。
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