マルヤ通商株式会社
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亜鉛めっき塗装方法

亜鉛めっき面の塗装について問題点を前の項に列記しましたが、適切な亜鉛めっき鋼の塗装方法を見出すにはこれらの問題点を技術的に解決しなければなりません。そこで、現在一般的に行われている亜鉛めっき面の塗装方法について、その適性や問題点を述べ、亜鉛めっきの塗装方法の参考にしたいと思います。

1) 化成処理
亜鉛表面は活性度が高く、有機塗膜の付着がむずかしく、しかも水に可溶な亜鉛二次生成物ができやすい、このために亜鉛めっき面の塗装がむずかしいといわれているわけですが、この問題を処理するには亜鉛めっき表面の活性度を抑える方法があります。

  すなわち、亜鉛表面に化成皮膜をつくる方法であり、一般的には塗装前処理としての化成処理法にはクロム酸処理法とリン酸塩処理方とがあります 。

ア)クロム酸処理法
  一般にクロメート処理法とも言われている方法で、 50〜100g/?の高濃度のクロム酸を使用する方法があります。

  高濃度クロム酸を使用する方法は亜鉛めっきの耐食性を向上させることを目的とし、塗装をしないで使用される場合が多く、低濃度のクロム酸処理は塗装するまでの白錆発生を抑制し、同時に塗装前処理用として耐食性を向上させるものであります。

  クロム酸による化成皮膜は亜鉛表面に Cr(OH) 3 、 nCr 2 O 3 、mCrO 3 、ZnCrO 4 、Zn(OH) 2 などが沈着析出し、皮膜形成するものであります。また、皮膜中の6価のクロムは皮膜が破れた場合それを修復し、耐食性を向上させる自己修復効果があるといわれています。

  このクロム塩皮膜の耐食性は非常に優れたものがあり、亜鉛の保護という意味では優れた方法といえます。しかし塗装の前処理法としては必ずしも優れた方法とは言えないようです。すなわちこの方法による塗装前処理では塗膜の長期密着保持性に問題が多く、好成績の場合と早期に塗膜剥離を起こす場合とがあるので、注意が必要です。

  これはクロム塩の結晶構造が経時的に常に変化をし、長期的には微細なクラックが発生するため塗膜の付着力が低下するものと考えられます。

イ) リン酸塩処理法
  一般的にはパーカライジング法またはボンデライト法といわれるもので、リン酸と第一リン酸塩からなる溶液で亜鉛を処理し、水に不溶性の第二リン酸塩を亜鉛表面に沈着析出し、皮膜形成させるものであります。

  亜鉛のリン酸塩処理被膜は耐食性,付着性ともに非常に優れており、塗装前処理として適合した方法といえます。

  しかし前にも述べましたとおり亜鉛は、活性な金属であり、反応性が強いため非常に大きな結晶を生ずることがあります。このような化成皮膜は極めて脆く塗膜付着性を阻害することとなります。このようなことを防止するには、適切な処理剤の選定とシビヤーな溶液管理が重要なポイントになります。

以上二つの方法はいずれも工場ラインのよる方法であり、一般的な屋外での塗装 前処理には適しておりません。

2)エッチングプライマー(ウオッシュプライマー)の塗装
  亜鉛めっき鋼の塗装で現在最も一般的に行われている方法としてエッチングプライマー (一般的にはウオッシュプライマーと呼ばれている)を下塗りして塗装する方法があります。ウオッシュプライマーはポリビニルブチラール樹脂をベースとし、リン酸、ジンクロメートからなる金属表面処理用塗料で亜鉛の表面をエッチングし,リン酸塩被膜を形成し、同時に塗膜をつくるものであります。

  このウオッシュプライマーは塗装時の環境湿度の影響を非常に受けやすく、塗膜形成にバラツキが多いという問題があります。このため上塗りされた塗膜の密着性 保持にもバラツキを生じ、部分的剥離の原因となるのであります。

  したがってウオッシュプライマーの塗装の場合はクロメート処理の場合と同様に好結果の場合と早期剥離を記す場合がありますので注意が必要です。

3)安定な塗膜による被覆方法
亜鉛めっき鋼表面を安定で、緻密な塗膜で被覆することにより亜鉛を保護する方法です。

  一般的に下塗り塗料は亜鉛に対し付着力の強い樹脂で、しかも亜鉛の溶出により生成するアルカリに対しても耐久性のあるエポキシ樹脂系の塗料を使用し、上塗り 塗料には耐候性に優れ、透水性の低い塩化ゴム系、塩化ビニル系、ポリウレタン樹脂系の塗料を塗装する場合が多いようです。

  しかしいかに透水率が低く、安定な塗膜であっても長期的に安全な水遮断は不可能なことであり、塗膜による長期の亜鉛溶出防止は困難で、長期的にはいずれ塗膜の剥離はまぬがれ得ないものであります。

4)亜鉛末塗料を応用する方法

ア)亜鉛末、酸化亜鉛塗料

  亜鉛末と酸化亜鉛を主顔料とし、アマニ油、アルキッド樹脂、フェノール樹脂など油性系合成樹脂をバインダーとする塗料がアメリカでは METALIC ZINC PAINTといわれ、亜鉛めっき鋼用塗料として長年にわたって使用され成果を上げています。(アメリカ連邦規格TTP-641b)

  この種塗料は亜鉛末、酸化亜鉛と油との反応によってタイトな塗膜を形成し、酸素や水を遮断することによって防錆しようとするものであります。亜鉛めっき鋼用塗料としての効果は、塗膜剥離の原因の一つである塗膜中の遊離脂肪酸や紫外線により分解生成する脂肪酸とめっき表面の亜鉛との反応を抑制する作用があり、亜鉛めっき鋼に対する塗膜付着性向上をはからうとするものであります。


  日本国内でも昭和30年代から広く使用されていますが、(三井金属塗料化学商品名 ジンキー80)かなり多量の亜鉛末を混入するため色彩に制限があり、カラフルな要望に応えることができない欠点があります。

イ)ジンクリッチペイント

  ジンクリッチペイントは古くから溶融亜鉛めっき鋼の亜鉛被膜破損箇所の補修用に使用されており、これらの用途にはなくてはならない塗料であり、その実績が高く評価され、現在各方面で亜鉛めっき鋼のタッチアップペイントとして多量に使用されています。

5)鉛酸カルシウムプライマーによる塗装
  亜鉛は活性で極めて反応し易い金属であることは先に述べた通りでありますが、この反応の度合いは亜鉛と接触する水の PHと関係が深く、亜鉛は、塗膜を通じて浸入してくる水のPH9〜11の領域で最も高い安定性を示します。

  ここで説明します鉛酸カルシウムは鉛の酸化物とカルシュウム塩を高温焼成した化合物 (Ca 2 PbO 4 )でありますが、鉛酸カルシュウム水溶液のPHは10前後の数値の数値を示し、亜鉛の最も安定した領域と一致しています。この鉛酸カルシウムを顔料として利用した塗料が鉛酸カルシウムプライマーであります。すなわち鉛酸カルシウムを応用した塗料は塗膜を透過してくる水分をPH10前後に保ち亜鉛表面を常に安定したPH領域に保持し、亜鉛の溶出を最小限に抑えることができるのであります。

  また鉛酸カルシウムは塗膜中の遊離脂肪酸と亜鉛とが反応して生ずる金属石ケン生成を抑制する効果もあります。鉛酸カルシウムプライマーはこの二つの効果によって亜鉛めっき鋼に対し長期の塗膜密着保持が得られるわけであります。

  日本で鉛酸カルシウムプライマーが開発されて 20数年を経過していますが(三井金属塗料化学商品名ユニコープ)その間亜鉛めっき鋼用塗料として、送電鉄塔、スチールフェンス、亜鉛鋼板屋根などに多量に使用されており、すぐれた実績を示しております。

6)リン酸亜鉛プライマーによる塗装
  最近開発された塗料に無毒性防錆顔料を使用したリン酸亜鉛プライマーがあります。

  化学的に安定なリン酸亜鉛は Zn 3 (Po 4 ) 2 ・4H 2 Oの化学式が示す通り4水塩でありますが、一般的に防錆顔料として使用されるリン酸亜鉛はZn 3 (Po 4 ) 2 ・2H 2 Oの2水塩であり、この2水塩のリン酸亜鉛は水を吸収して安定な4水塩となる性質のものであります。従ってリン酸亜鉛プライマーを亜鉛面に塗装しますと塗膜を浸透してくる水分をリン酸亜鉛が吸収し、安定な4水塩となり亜鉛と水分の反応を阻害します。また、過剰の水分に対してはリン酸亜鉛は徐々に溶出し、亜鉛との反応が起り水不溶性のリン酸亜鉛を形成し、亜鉛表面に沈着析出して安定化するのであります。

  また、亜鉛はめっき鋼に使用される金属亜鉛は酸に対し非常に弱い性質がありますが、工業性雰囲気注でリン酸亜鉛プライマーを塗装している場合、亜硫酸ガスなど浸入してくる酸成分を塗膜中のリン酸亜鉛が分解して安定化する機能があります。

  これらのすぐれた性質を応用したリン酸亜鉛プライマーは公害面においても無毒性が高い評価を受けており、鉄鋼の防錆塗料として、また、亜鉛めっき鋼塗料として認められつつあります。


日本ペイント防食コーティングス鰍ナはヨーロッパにおけるリン酸亜鉛の開発会社であるイギリスのISC社から技術を導入し、リン酸亜鉛とこれを顔料とした塗料(商品名ユニコープF)の製造を行っております。

リン酸亜鉛は無毒性防錆顔料として社会的期待も大きく、これからの商品として、広く社会の要望に応えるよう努力しております

 
>>亜鉛めっき塗装の難しさ

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